「かして」と言われて固まってしまう。順番を抜かされてカッとなる。お友達にぶつかったとき、なんて言えばいいか分からず黙ってしまう——お子さんのそんな姿に、ヒヤッとした経験はありませんか。
でも、それは「気持ちがない」わけでも「意地悪」なわけでもありません。頭にうかんだ考えを、気持ちにして、さらに言葉にしていく道すじが、まだ整理しきれていないだけなのです。考え・気持ち・言い方を、いっぺんに頭にのせて選ぶのは、大人が思う以上に複雑な作業になります。
このプリントは、その道すじを「考え → 気持ち → 言い方」の3ステップで、ひとつずつゆっくりたどれるようにつくりました。「かして」「順番」「わざとじゃない」の3場面を通して、お子さんが自分の気持ちに気づき、言葉にする練習ができます。正解はひとつではないので、どんなお子さんも安心して取り組めます。
おへんじ どうする? プリント


「おへんじ どうする?」の前に知っておきたいこと

このプリントは「考え(どう思ったか)→ 気持ち(どんな気持ちか)→ 言い方(なんて言うか)」の3ステップで進みます。「かして」「順番をぬかされた」「わざとじゃないのにぶつかった」の3場面があり、場面が進むごとに、少しずつ自分で考える量が増えていく作りになっています。
大切なのは、このプリントに正解・不正解がないことです。場面1や場面2には決まった答えがなく、どれを選んでも、その子の「いまの感じ方」を映し出します。だから採点する必要はなく、選んだものを一緒に見ていくだけで十分です。
お子さんの答えが、ちぐはぐに見えることがあります。たとえば「むっ」とした顔を選んだのに、「つかっていいよ」を選ぶ、といった具合です。でもこれは矛盾ではなく、とても自然なことなのです。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の傾向があるお子さんは、「考え」「気持ち」「すべき行動」を、別々のものとして頭の中に並べておくのが苦手なことがあります。ワーキングメモリ(頭の中で一時的に情報を覚えておく作業スペース)にのせられる量が少ないと、「本当はまだ使いたい」という気持ちより、「貸してあげなきゃいけないらしい」という外側のルールが先に出てしまうのです。だからこのプリントでは、気持ちと行動をいったん切り離して、ひとつずつ◯をつけられるようにしています。
声かけでいちばん大切なのは、採点しないことです。どの組み合わせを選んでも、まずは「そう思ったんだね」「そういう気持ちになるよね」と受けとめてあげてください。否定されない安心感があると、お子さんは自分の気持ちを出しやすくなります。
たとえば場面2で「むっ」を選ぶのは、悪いことではなく健全な反応です。「いやだったね、それでいいんだよ」と認めてあげてください。反対に、場面1で「かしたくないな」と思っているのに「つかっていいよ」を選んでいたら、「本当に貸して平気だった?むりしてない?」と声をかけるチャンスです。がまんして譲るクセ(過剰適応)に、早めに気づいてあげられます。
気持ちと表情がうまく結びつかないお子さんには、視覚的なサポートが助けになります。「むっ」「もやもや」「にこにこ」のような感情を、絵と言葉でくり返し確認できる感情の絵カードを手元に置いておくと、プリント以外の日常の場面でも「いまはどのカードの気持ち?」と聞けて、気持ちを言葉にする力がぐっと育ちます。
また、こうした「やりとりの言葉」を体系的に学びたいご家庭には、関わりのことばを扱った絵本や書籍もおすすめです。場面の引き出しが増えると、プリントの先にある「実際のお友達とのやりとり」にもつながりやすくなります。
場面3には書き込み欄がありますが、ここは書けるお子さんだけでだいじょうぶです。書くのが苦手なら、口で言えれば大満足。プリントを通して、お子さんが自分の気持ちに「気づける」ことが、なによりの一歩になります。
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