「おはようって言おうね」。何度伝えても、その場になると声にならない。返事をしないわけではないのに、朝の玄関や教室の入口で足が止まる。
そんな場面を見ていると、大人の側も「どう言えばいいのか」が分からなくなってきます。でも、あいさつは実はいくつもの処理が同時に必要な、かなり難しい行動です。
このプリントでは、その中身を「ことば」「きもち」「声の大きさ」の3つに分けて、1枚ずつ取り組めるようにしました。
あいさつを しよう プリント


あいさつの練習の前に知っておきたいこと

「あいさつしなさい」と何度伝えても声にならないとき、やる気の問題に見えてしまいますが、実際にはもっと手前で止まっていることがほとんどです。
あいさつは、相手が近づいたことに気づき、その場に合うことばを思い出し、声の大きさを決め、実際に口に出す──これを数秒のあいだに同時に行う課題です。
一度に保持できる情報の量(ワーキングメモリ)には限りがあるので、どれか一つに負荷が集中すると、全体が止まります。ことばは知っているのに出てこない、というのはこの状態です。
とくに声の大きさは、「大きすぎるよ」「聞こえないよ」と言われた経験が重なるほど調整が難しくなり、出さないほうが安全だという判断につながります。
だからこのプリントは、3つを1枚ずつに分けています。
声かけも同じで、混ぜないことが大事です。
ことばを思い出す段階なら「朝はなんて言うんだっけ」。
タイミングなら「あの人、こっち見てるね。いまなら聞こえるよ」「まだ遠いから、もうちょっと待とうか」。
声の大きさなら「さっきの声、ちょうどよかったね」。
一度に一つだけ伝えると、どこが良かったのかが本人に残ります。
3枚目で扱う声の大きさは、ことばで説明されても調整しづらい感覚です。絵とメーターに加えて、実際に「おはよう」と声に出しながら塗ると、量として体感できます。
このような感覚のつかみにくさがある子には、声の大きさを数値で見せられるツールが有効です。
スマートフォンの騒音計アプリや、卓上のサウンドレベルメーターを使って「いまは40、教室ならこれくらい」と一緒に確かめると、抽象的だった大小が目に見える基準に変わります。
2枚目の下段にある「てを ふってみる」「まずは ちいさな こえで」「ともだちと いっしょに」は、どれも正しいあいさつです。
いくつ選んでも、全部選んでも構いません。
ここで「ちゃんと声を出しなさい」と足すと、選択肢を用意した意味がなくなります。
選んだものを翌日に1回だけ試す、そこまでつなげば紙の上の学習が行動に変わります。
なお、あいさつができなかった場面で相手が「さみしい」と答える子もいますが、それも間違いではありません。
「どうしてそう思ったの?」と聞くと、その子の見え方が分かります。
ここで扱っているのは相手からの制裁ではなく、自分の中に残るもやもやした感じのほうです。
気持ちを言葉にすること自体に時間がかかる場合は、表情カードを手元に置いて指させるようにしておくと、選ぶだけで会話が始められます。
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今回のプリントとあわせて取り組んでみましょう!





